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2005/07/19

E.T.と宇宙戦争、そしてプライベート・ライアン

wow6(※ネタバレあり。ご注意下さい!先週の日曜日に観た2本目の映画はスピルバーグ監督の最新作「宇宙戦争」でした。この映画が「E.T.」とは対照的な作品であることは知っていましたが、それでもあえて観てみました。

私は高校生の頃に「E.T.」を映画館で2度観ています。数年前に一部修正や未公開シーンを入れた20周年記念版が公開されたときも、まだ観たことがないという主人を引っ張って観に行きました。

地球に植物採集にやってきて、一人取り残されてしまった科学者のE.T.(異星人)と、彼をかくまい、交流を深める少年エリオットとの心温まる物語は、20年経ってもなお感動の涙を誘い、純粋な子供の心を思い出させてくれました。M&M'sのマーブルチョコでE.T.を誘い出すシーンや、E.T.がお母さんから隠れてクローゼットのぬいぐるみと同化しているシーン、冷蔵庫のビールを飲んで千鳥足になるシーンは楽しくて大好きです。ET

でも、一番好きなのは、やはりあの空を飛ぶシーン。「ああ、だめだ。もう捕まってしまう!」そう思った瞬間に、ふわっと自転車が舞い上がり、青白く大きな月をバックに大空を飛んでゆくあのシーンに、私は泣けてしまうのです。
それまでは子供たちが必死でE.T.を守りますが、自分をかくまっているために共に追われている子供たちを、このとき初めてE.T.は超能力を使って守るのです。しかも、決して大人を攻撃しない。最初はグロテスクに思えるE.T.の容姿が、話が進むにつれてどんどん愛らしく思えてくるのも、この異星人が愛情深くてユーモラスな性格だからなのですよね。
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そんな優しい異星人の映画を作ったスピルバーグ監督が、なんでまたこんな世にも恐ろしい残虐な異星人の映画を撮ったのか…。ワイドショーでの監督のコメントを要約すると「優しい異星人の映画はE.T.を撮った事で満足したからもう良い。今度は観客を怖がらせるものを撮りたかったんだ」…というようなものでした。たしかに、怖いです。おもいきり残虐です。標的を一瞬にして灰にしてしまうレーザー光線をあびせまくり、破壊の限りを尽くし、生け捕りにした人間は串刺しにして血を抜きとる。Jura01
廃屋をくまなく探し回る様は、ジュラシックパークで厨房に逃げた子供たちを追い詰めるシーンを髣髴とさせて、震えて歯がガチガチと鳴りそうに怖かったです。悔しいけれど、監督の思惑通りに反応してしまいました(^^;

でも、異星人よりも怖かったのは、極限まで追い詰められた人間の心理です。
最初は、近所の住人や友人・知人も助けようとしていたのが、家族を救うために殺人まで犯すようになる。
非常に悲しいけれど、結局最後はみんな自分が可愛い。自分のことしか考えなくなる。

私は観終わった当初、監督に裏切られたような、非常に悲しい気持ちでした。
「あんなに優しい異星人を描いたあなたが、なんでこんな残酷なものを見せるの!?」
そんな思いで一杯でした。でも、この監督が意味もなく怖がるだけの映画を撮るかな…。

PBL01
釈然とせず、何日か考えて思いました。監督は「プライベート・ライアン」のような戦争映画も撮っていますよね。これは非常に評価の高い映画で、私も映画館で観ました(しかも2度目のデートで!)。冒頭30分の激しい戦闘のあと、スクリーン一杯に広がる無残な光景。そして、たった一人の名もない兵士を生還させろという思い切り私情を挟んだ命令のために、何人もの命が犠牲になってゆく理不尽さ。観終わった後の重苦しさは私には耐え難く、もう一度観るにはかなり勇気のいる作品。ですが、私はこれを観ておいて良かったと思います。
この作品で、あの凄惨な戦いの後のシーンをまざまざと見せつけられたからこそ、戦争の悲惨さのイメージをリアルに感じることが出来たし、戦争を憎む気持ちを強めることが出来たのだと私は思うのです。
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「プライベート・ライアン」が戦いの無意味さや悲惨さを感じさせるためにあえて惨さを強調したものであったなら、もしかすると「宇宙戦争」にも、自分たちの手で地球(自然)を破壊している人類への警告的なメッセージが込められているのかもしれません。動物や子供たちを虐待し、自然を荒らし、地球上で自分たち人間が一番偉いのだと天狗になっている人類に「そんなに調子に乗っていると、いつかしっぺ返しを食らうぞ(奴らのような者が来て天罰を下すぞ)」と。

最後の最後、微生物という太古の昔から存在する地球上の命の源であるものが地球を救うという設定は、あれほど高度な文明を持つ異星人が微生物のことまで知り得なかったはずはないんじゃないかと少々腑に落ちないけれど、どんな悲惨な映画にも、最後わずかに救いを入れるスピルバーグ監督らしさだと思えば、受け入れることが出来ました。

ちょっとやなもん観ちゃったな、という思いが残っていたので、こうして分析することで自分なりにオチをつけられてほっとしています。まあ、でも、いくら流行っているからといって、死の悼みを感じられないような子が安易に観たり、気が進まないのに無理をしてまで観たりすることはお薦めできないですね。

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